ピアノ教室コンセール・イグレック♪
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ブログ
エッセイ:香しい調べ
投稿日:2009-12-26
ひと月ほど前の11月23日、河口湖円形ホールでコンサートを聴きました。
一帯は紅葉まつりの終盤、この素敵なホールに出かけてみたいということで、友人と時間を作って出かけました。
ハイドン、ベートーヴェン、シューベルトの作品にまじり武満徹、Yuki Morimotoの作品が演奏されたのですが、ウィーンフィル首席のおふたり、ヴァルター・アウター氏(フルート)とユンゲル・フォグ氏(チェロ)に加えて浦田Fog陽子さんのピアノがとりわけ素晴らしく、会場のベーゼンドルファーの音色とともに異空間へ誘う香しい調べを聴かせてくれました。
昨今ではヨーロッパでもクラシック音楽の衰退が囁かれていると聞きますが、このコンサートを聴いてまだまだ歴代のクラシックの伝統を語り継ぐ音楽家というのはいるものだと深く思ったものです。浦田Fog陽子さんのピアノに、音楽に大切な豊かな母性とこどものようなキラキラした純粋さ、凛としたセルフコントーロール力などを感じました。ひとつひとつの音すべてに限りない表現があり、また音に対するセンスが卓越していて、金粉がこぼれてくるような神々しさがあります。それは十数年前に聴いた20世紀の名ピアニストたちの往年の演奏を連想させるような、・・・そういったとても深みのある重みのある伝統へとつながる、最近ではなかなか触れられない感動をおぼえました。
後半に聴いた「没薬」はウィーン在住の作曲家Yuki Morimoto氏の新作。作曲、指揮、声楽、楽器演奏のレッスンにと幅広く活躍されているとのことですが、氏のレッスンを聴講した際、氏が奏でるモーツァルト、シューベルト作品を聴いているとウィーンのその作曲家の時代にタイムスリップしたかのような、或いはあたかもシューベルトやモーツァルトが舞い降りてきて弾いているのではないかと思うほど深淵な時空に触れ、感動したことがあります。ヨーロッパで西欧文化の分野で活躍している日本人の在り難さ。そこには西洋人、東洋人という枠を越えて、この西洋の伝統文化をどうしても次代に継承してゆこうという音楽への愛と信念を感ぜずにはいられませんでした。それもこれもウィーンという懐深い土壌がもたらす術でしょうか。
いずれにしても今年の終盤にこのような素晴らしいコンサートが聴けて、幸せな気もちでした。
浦田Fog陽子さんのピアノに感動し、でも名古屋ではほとんど知られていないのではと思ったので、特筆。
*コンサートの翌朝、湖畔でお目にかかったユンゲル・フォグ、
浦田Fog陽子さん夫妻とぱちり!
音楽のこころ、たずさえて
投稿日:2009-12-19
今朝は一面の雪景色。
暖冬かと思いきや、一気に寒くなりました。
今年は自分の時間を大切にしていろんな勉強をしてきましたが、そんな中で生徒たちといっしょにいる時間をとりわけ大事にしてきました。皆のピアノへの情熱はたいへん強く、上達に向けて一生懸命。こないだも小1の生徒がレッスン室からお庭に出た帰り際、お母さまに「きょうのレッスンどうだった?」と聞いている声がして、すごいなと思う。毎回のレッスンでのアドバイスをきちんと消化してくるくらい積極性がみられるようになると、次へ次へと向けて仕上げのレベルはどんどん上がります。それがYPF、ピティナ、グレンツェンなどのピアノコンクールや日本ピアノ教育連盟オーディションでそれぞれ受賞者が出る結果につながり、またそのコンクールを受けた子たちが皆それぞれに甘んじることなく、次のステップへと誠実に努力している姿を見ると、とても感動します。
受賞などの結果にはいかなくても、この秋のオーディションですばらしく開花した子がいます。この生徒はいつもあいさつも小声で言ったか言わないか。・・・バサッとカバンをフローリングの上に投げすてるように置くと、ピアノの前に座っても足がバタバタ。練習してきたのを1回弾くと、もう集中力がポ〜イとどこかへ飛んでいる。音感はいいし、すこし教えるとさっととらえるし、すこし弾いて音を示せばまたすぐに取りいれる。でもその気もちの在り方にいつもどうしたものか、と思っていた。小学生で、毎週ピアノのレッスンを楽しみに通っているだけならいいけれど、今回オーディションを受けたい、と言う。本番のひと月前を切ってからのレッスンは、叱ってばかりでした。本人なりに緊張感は出てきているのでピアノについてはひと言二言いうだけでさっと入る。でもその態度はだらだらの連続。私はお説教をしているつもりはなく何度も同じ注意をしている訳なのだけれど、それが本人のだらだらした気もちの在り方で、お説教と化してしまう。「こんどオーディションを受けに行くんだよね、もうじきだね。そこにいらっしゃる審査員の先生方はK君にいちども会ったことないのよね。それでこの課題曲2曲弾くと何分かかる?ざっと4分くらいね。とするとじっと4分のあいだK君のピアノを聴いて下さって、それでこの子にはどんないいところがあるだろう?他に、足りないところはどんなところだろう?それでどうすればこれからよくなるか?って真剣に考えて紙に書いて下さるの。わかる?そうやって時間とエネルギーを会ったこともないK君のために使って下さるの。だから演奏の前と後には心をこめておじぎするのよ。感謝の気もちが持てなければいけません。そうやって時間とエネルギーをいただくことのすばらしさをわかるひとになろうね。自分のために時間とこころを使っていただくっていうこと。それはお金を払うからもらえるというものではありません。」そこまで話すとピタッと照準がはまる瞬間を感じた。音楽には規律が必要だという私の信念が、彼の心にひゅっと入るのを感じた。そしてその直後、彼の指からこころからの素敵なピアノが流れるのを聴いた。オーディション後のレッスンでは講評を一緒に読み、噛みくだいてその内容を解説してあげると一生懸命に耳を傾けた。レッスンでもとても積極的になり、自信をもった様子。教える、という仕事は奥が深いと思う。ここぞ、という時には賭けに出る。彼は来春お父さまの郷里に戻るということを聞いているのでもう数カ月しか教えられないけれど今回とてもいい思い出ができて、さみしいという感はない。ぎりぎりまでよろしくお願いします、とお母さまの表情も明るい。いい音楽を一生こころに秘めたひとになってもらいたい、とつよく思う。
こないだの話
投稿日:2009-11-21
さて最近のことをすこし。
そう、この秋は2つのピアノリサイタルを聴きました。
小菅優のオール・ベートーヴェンとベヒシュタインのGPによるピアノコンサートでした。
それぞれとてもいい雰囲気で、楽しめました。でもふか〜い印象はありませんでした。
いい演奏が聴きたいな、と思っていた頃に何気なくBS-hiの番組で深夜放送していたものを録画したのですが、「アルカディ・ヴォロドス・ライブ・イン・ ウィーン」というのにびっくり仰天しました。そのあとにアンデルジェフスキのリサイタルも放送されて録画したのだが、聴けない。・・・(いやぁ、それだっ て実に素晴らしいのに、あまりのヴォロドスの凄さに絶句だったので。)
あのウィーン・フィルのニューイヤーコンサートが催されるウィーン楽友協会大ホールでのリサイタルで、スクリャービンの「白ミサ」といい、リストの「ダン テを読んで」といい、和音が密集していたり連打の部分でも、ものすごく音が柔らかで、なめらかで、カンタービレで、なんだかこれまで聴いてきたピアノの 音ってなんだったの?っていうくらい
違うのです。それでうぅ〜む、と唸ってしまった。何が違うのかしら、と。このごろ譜面の読みが深まりつつあって、譜を読み込んでいるだけで作曲家の世界そ のものに感動することが多いので、演奏のすごさにちょっとやそっとでは動かなくなってきているところがあったので、かる〜い興奮状態。・・・うぅ〜む、 う〜む。ほんとうに音が重なっても濁らない、澱まない、重くならない。・・・そう、このひとはすべての音を横に聴けているのだ。たとえばCの和音をふつう はド・ミ・ソの集合体として聴いてしまうところだが、T・X7・Tの和声でソ・ラ・ソ〜、ミ・ファ・ミ〜、ド・ド・ド〜と横に聴く力、まぁそんな単純な進 行ならいざ知らず、どんな音になっても何声部になってもこのひとは横に横に聴き分けている。うわぁぉ!すごい!こういうのはやっぱり天才的としか云いよう のない才能なんでしょうね。ぱっと一目風景を見ただけで立体的にものが描けちゃう、とかそういうひとたまにいるらしいから、特殊な才能というか、脳の構造 が違うんだなぁ、きっと。横へ横へ聴いてその声部を重ねて音を描いているから混色しないし、すべてが流れていて硬さをもたらさない。凄かった。また再放送 がいつかあるかもしれないので、ブックマークです。
さて秋も深まり、街路樹の紅葉もきれいになってきましたが、こないだ走り慣れた道で1本の樹に赤、青、黄の色が混じって「すっごくきれいだなぁ。」と思っ て運転中に窓から見上げていた樹があったのですね。「でも明日見るとこの味わい変わるかもね。」って自然のせつなに妙に感じ入っていたのですが、次の日走 るとその界隈だけ樹木の枝がなんとぶった切られていて、そう何だか市の緑化作業の一環なのかさっぱり分からないのですが、造園業のかたが来てバッサバッサ 切られていたのでした。思わずキュンとなりましたが次の瞬間、それを見ながら「音って切ないんだな。」と思いました。音って自然といっしょで、その日その 時一瞬の味わいを醸して消えてゆく。もういちどあの演奏を聴きたいと思っても同じ感動ってあり得ない。自然と同じで同じ人が同じ曲を奏したとしても、刻一 刻味わいは変わるもの。そうして私の記憶に残っている素晴らしいライブの音の感動の数々がふわぁ〜っと湧きあがってきたのです。そういう音をこころに持っ てるって、私はいつだってほんとうに幸せです。
そしてまた想念は移ろい、いくら作曲家が楽譜に想いを書きこめたとしても、やはりその微妙な味わいはその作曲家の一時の想いであり、その時代の一瞬であ り、せつないものなのだという気もちがもちあがってきたんです。でもだからこそ、なんていうのだろう、うまく言えないけれど、時代や空間を超えたところの 共有観、世界観みたいなものがなければ音楽を真に理解するってできないんだな、という気がしたのでした。
まぁ、音楽は果てしなく深い。
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