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ピアノ教室コンセール・イグレック♪


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「黒田ゆか春のコンサート」を終えて

投稿日:2016-06-22

5月22日の「黒田ゆか春のコンサート」では、皆さまありがとうございました。

 

このコンサートでははじめてベーゼンドルファーインペリアルのピアノを弾くということで、知合いの調律師の方数名に聞いてみたところ全員が口をつぐんでしまうほど、やはりこのピアノで演奏するということはただ事ではないらしい、という感触。おひとりの方は「スタインウェイもベーゼンドルファーインペリアルもどちらでも借りられる状況なんだったら、何も迷うことなくスタインウェイでしょう?」と。そして自分が立ち会ったことのあるベーゼンドルファーインペリアルを使ったコンサートで、あるピアニストが本番始まって裾に戻ってきて言うには、「自分の弾いている音がつかめない」・・・。


 

いずれにしても、こうした名器を扱うにはそれなりの技量が要る、と集中した練習をかさねてきました。 

ベーゼンドルファーインペリアルはほんとうに撫でるようなタッチにもそっと反応してくれて、木の葉のそよぎ、風のまにまに消えてゆく鐘の音、光の陰影、水しぶきをあげる金の魚、そういった繊細な情景があらわせる凄い楽器だと思いました。

普通のグランドピアノだったらかするようなタッチでも、ほわ〜んと響き、反応します。

non legatoからぎりぎりlegatoにもっていってほんの少しペダルを使う。

ラモーの「鳥のさえずり」での話ですが、こうしたことで、鳥がさえずり合い、倍音という相乗効果の響き合いが聴こえてきます。

ショパン作品でも音の陰影が芸術的、というほどに立ち現れます。そして音と音が溶け合って、なめらかで繊細な音の響きのなかで、弾きながらうたた寝しそうになるくらい、気もちよい音でした。

ドビュッシーにいたっては、ほんとうに鍵盤を撫でるような軽やかなタッチにものすごく反応し、万華鏡のような音響を創り出します。

映像第2集の「金の魚」ではとてもめずらしい経験をしました。聴きに来てくださった方のご感想にも「ピアノの音色がほんとうに豊かで心地よく、<金色の魚>の演奏では先生の鍵盤からキラキラした魚が跳び跳ねているのが目に浮かんできたのです。不思議な気分でした。」・・・まさに私も弾いていて、水しぶきを上げて舞い踊る金の魚を見た思い、そうしてその魚が金の蒔絵にす〜っと納まるのを感じました。こんなことはどれだけ練習していてもあり得ないことで、演奏しながら驚きの瞬間でした。



もうひとり長い感想を寄せてくださったので、付記します。

「すばらしいひとときをありがとうございました。
情景が目に浮かぶようなラモーやドビュッシー、サマズイユ。音がこれほど雄弁に情景を描くことができるものかと、びっくり仰天。

ラモーは、題名からしてもっとこじんまりとした可愛らしい曲を想像していたのですが、スケールの大きさも感じられてこれまたびっくり。きっと、鳥のさえずりだけじゃなくて、その背景の森も描いているのでしょうか。

ハイドンなんて、こんなに深くて面白いなんて知らなかったぞ〜!という感じで、目からウロコの演奏。今度はぜひモーツァルトも弾いてください。先生のモーツァルトが聴きたくなりました。
そして情感のこもったショパンのエチュードに、うってかわって洒脱ささえ感じられる力みのない即興曲。そしてドビュッシーにいたっては、これぞ先生の真骨頂!色彩豊かな音。独立していながらも溶け合っているそれぞれの音色。先生の演奏では力強い音も優しい音も、どれもが生きている。

そしてこれは全演奏に共通して感じたことですが、先生のバランス感覚の絶妙なこと!

一音一音にすさまじく集中している先生と、全体を俯瞰して見ている先生とが同時に存在しているのかのような。そのバランスがあればこそ、紡ぎだされる音色に全身全霊を傾けながらも、全体と通してみるとまったく力みのない洒脱な演奏が出来上がるのですね。」

 

また「タウンニュースてんぱく」の記者さんにもご来場いただきました。こちらの記事もお読いただけましたら嬉しく思います。

https://www.facebook.com/concert.y/photos/a.917865248247419.1073741827.916429158391028/1172936122740329/?type=3&theater


こうして名器ベーゼンドルファーインペリアルの調べを皆さまにお伝えできたこと、何よりでした。
お聴きくださった皆さま方、ありがとうございました。


      


次回は12月23日(祝)15:00〜名古屋市千種区のスタジオ・ハルにて、名フィルオーボエ首席奏者の山本直人氏とデュオコンサートを予定しています。

すでにご予約を入れていただいている方もいて、とても嬉しく思います。

曲目詳細は後日イベント欄でご案内します。どうぞよろしくお願いいたします。 

 

Boston ピアノに新調!

投稿日:2016-04-05

4月に入り、素敵な春が到来しました。週末の桜、きれいでしたね。

 

ピアノ教室では、このたび生徒レッスン用のピアノを新調しました。

 

10年近く使ってきたYAMAHA Z1でしたが、いちばん年少の生徒さんがこのほどピアノを購入され生徒全員がピアノで練習できる環境が整ったこともあり、また私のピアノ教室ではグランドピアノやスタインウェイのアップライトをもつ生徒も少なからずいますし、日ごろから自宅のピアノ練習では飽きたらず楽器店のグランドを借りて恒常的に練習している社会人生徒も多く、ピアノへの意識は高いと思われますので、かねがね気になっていた生徒用ピアノをBoston Grand Piano http://www.steinway.co.jp/pianos/boston/ に入れ替えた次第です。

    

  (思い出いっぱいのYAMAHA Z1)                       (梱包)

   

   (ちょっと見ぬ間にクレーン車が!)                              (ようこそ!(^^♪ )

 

教室に入ってレッスンバッグを置くなり「あれ?ピアノ変わった?」と目端を利かせる小学生徒、ちょうどシューベルトの仕上げのレッスンでコンサートモードになる高学年生徒。・・・うちの教室では初級コース以上はみなコルトーの指の体操からレッスンが始まりますが、もうその段階で「いい響き〜!」とピアノの響きに聴き入っていり、顔がほころんでいるところがいいですね! 

「とてもいい音。」「まろやかな響き。」「何だかとってもいいですね。」「ドキドキ、緊張しちゃいます。」「うわっ、何かちがう音〜。」など社会人生徒さんからちいさな生徒たちまで皆さんとても喜んでくださって、よかったな、と思います。
コンクール前の生徒たちにはテクニックの違いによる音の違いが前より増してよく伝わるようで反応が早いですし、耳も研ぎ澄まされて自分の音をよく聴いているのがわかります。

 

ある生徒のお母さまに「先生、ありがとうございます。ふつうならご自分のピアノをということですのに、生徒用のピアノを新調してくださって。・・・」と言われた時にはあらら、ちょっとジンと来てしまいました。

けどピアノを新調してから耳がつかれなくなったのも事実です。考えてみたら日ごろはレッスンで生徒たちのピアノを聴いている時間のほうが自分の練習時間より長いのですから、これは大助かりというものです。


奥行きの問題からいちばん小さなサイズではありますが、音の豊かさは流石です。
生徒の皆さん、毎回のレッスンでこのピアノが弾けるのを楽しみにしてください。

また生徒OBの皆さん、このピアノ弾きに遊びに来てくださいね。 

 

     

 

搬入日の夜は急きょ、イザベル・カラード女史によるチェンバロマスタークラスの聴講へ。最後のコマはチェンバロ伴奏付のリコーダーレッスンで、結局のところ1コマしか聴講できなかったですけれど、バロック奏法の鍵となる考察法の奥義に触れる有意義な時間になりラッキーでした。(私はホントこういうところ、我ながら耳が早いというますか、目が早いといいますか。・・・(^_-)-☆)

レッスン終了後はチェンバロとピアノフォルテを弾かせていただき、これまた面白いひとときでした。

翌日バロックの曲をピアノで弾いてみて、これまで長らく疑問だったところ、どうしても不可解だったところが解明し、何をどう考え組み立ててゆけばよいのかがヒットした。こうした勉強は、労を惜しまずしてみるものですね。急きょ振り替えてくれた生徒たち、ありがとう。 

 

さてその翌日は朝5:50起床で、中日ピアノグレードテスト高山審査へ。今年は継続参加者の見事な上達ぶりに接することができ、頼もしくも嬉しい一期一会でした。
一気に開花した桜。長良川沿いもきれいでした。

19時すぎに金山で知人と待ち合わせ、コンサートの打合せ。 長い一日。・・・

くったり、しかし音楽三昧の幸せな一日でした。

 

週末の午後は振替も入りぎっしりレッスンで、終わると同時に山崎川へ Go!

今年も桜たち、ありがとう。 

満開の桜たちが、たくさんのひとたちの目を楽しませてくれていました。

 

      

    

私がレッスンで使っているメソッド・テキストについて

投稿日:2016-03-04

きょうは私のピアノレッスンで使っているフランス奏法のメソッドテキストについて書こうと思います。

まずはこの3冊をご覧ください。


      

いちばん右がコルトー著の「コルトーのピアノメトード」、中央がジャンヌ・ブランカール著の「初心者のためのピアノ・テクニックの基本原理」(ともに全音出版)、そして左がそのまた導入書といえるキッズ向けの「Le Petit Clavier」(フランスの出版社のもので英語とフランス語の解説文、海外から買い付けています。)

アルフレッド・コルトー(1877〜1962)は20世紀前半に、指揮、ピアノ演奏、教育活動に活躍したフランスのピアニスト。録音もたくさん残されていますが、魂のこもったエネルギーのほとばしる音の独特の響きは、今も多くの人の心をとらえます。アルフレッド・コルトーのピアノ、ジャック・ティボーのヴァイオリン、パブロ・カザルスのチェロによって結成されたカザルス・トリオはつとに有名で、20世紀前半を代表するピアノトリオとして音楽史に残る名演を残しています。

このコルトーが書きあらわした「コルトーのピアノメトード」はたいへん細かな練習法が書き連ねられていて(a)、そのすべてを練習することはたいへんなことですし、ただ書いてあることをそのまま練習してもよいのかもしれませんが、その基盤にある目的をわかっていることは大切だと私は考えています。


              (a)

いきなりこのテキストを練習するよりもこのテキストの練習法から根幹的なものを抜粋して書かれた「初心者のためのピアノ・テクニックの基本原理」をじっくりと手のうちに入れてゆく方がずっと上達へ導いてくれることでしょう。 

コルトーの「ピアノテクニックの合理的原理」のさいしょに「鍵盤上での訓練の日課」として書いてある文章はすこし複雑で難解ですが(b左)、初心者用テキストの最初には「指の体操」なるページがあり、比較的わかりやすく書かれています。(b右)

       (b) 

この最初のものはショパンが生前自分のピアニズムの理念を後世に伝えんとして書き始めたピアノについての覚え書きの最初の部分のものです。(ただコルトーはなぜか<ド・レ・ミ・ファ・ソ>のポジションでと書いていますが、これはショパンの言っているとても大事なことが抜けてしまっているので、教室では適宜ポジションを替えています。)


最初の指の体操は、5指の独立、手と手首の柔軟性をつくる基盤となる重要なもので、からだの柔らかい年齢層でもわかってくるのに3か月はかかります。この最初のページの手のフォルムなど若干アバウトで詳しくはすこし違っているところもありますし、また解説文の日本語訳も文章が固く説明が難解で誤解されやすいところもありますので、私はブランカールが著したものをよりわかりやすく、No.1やNo.4のたいせつな体操も、最近では日常生活でも手首を使うことが少なくなってきているため、生徒の進度や年齢、経験年数に応じて目的がどこにあるかを明確にしながら、オリジナルな方法を使って教えています。


こうして5指の独立と手首の柔軟性がすこしわかりかけたところで、1指の軽やかさと手首の水平の動きをともなってスケール・アルペジオの練習、見直しに入ってゆきます。後半ページでは、重音・ポリフォニー・和音・トレモロなどについてのテクニックが書かれていて、こうしたテクニック本というのは通り一遍の練習ではなかなか身につくものではないですし、私の教室でこのテキストから入った生徒はこのテキストを少なくとも2回は見直すことになります。そして曲の弾きにくいパッセージのなかにあるテクニカルな要素とこのベーシックをリンクして解説し、テクニックを手のうちにしてゆくことになるのです。


さて私のピアノ教室で「幼児入門コース」から始めた生徒さんの多くは、初心者コースにあがるとこの初心者用テキストの導入書にあたる「Le Petit Clavier」に進みます。

  

こんな素敵なカラー刷りの本で、習ってすぐのLesson1からstaccatoの項があり、すでにLesson1、2からシュットやポワニエなどの技法に触れます。(c)

5指の独立へといざなう項も各章にあり、音階もさいしょはおや指くぐりのない型で音をおぼえることで力みのない方法を取っています。(d)


   (c)

 (d)  

 

またこのテキストを使うのは年中〜小2あたりの年齢ですから、シークエンスの音型や転回音程、半音あげた転調などの練習は、「西洋音楽」の合理的でシステマティックな一面を将来読み解いてゆくロジカル・シンキングを身につけてゆくうえで、よき礎になっていると私は思います。


  (e)

どこかでみたことのあるこんな練習(e・下段)も、シークエンス音型のAgilityの一環としてさりげなくでてきます。・・・ちなみに、フランスではハノンの発音は「アノン」になります。(笑)

 

この導入書「Le Petit Clavier」の解説はフランス語と英語で書かれていますが、いい意味でおおざっぱかもしれません。でもその先の展開がわかっていますので補足的なことはレッスン内で説明をしながら矯正していますし、また年少の子どもたちには【いい音】が聴きわけられることがなによりですから、習いたてのこの時期から自分の指や手の動きと音色の関連が意識されてゆくことは素晴らしいことです。

このテキストが終わると「初心者のためのピアノ・テクニックの基本原理」に進みますが、なんの違和感もなく入ってゆけます。

上級コースでは「コルトーのピアノメトード」を部分的に使うことはありますが、私の考えでは「初心者のためのピアノ・テクニックの基本原理」の中身をきちんと習得さえできれば上級の曲までほとんど問題なく弾けます。 

 

私がこのフランスメソッドと出会ったのは、ニースでの国際夏期アカデミーのパスカル・ロジェ氏のレッスンで或る日「テクニックの基礎について教えてほしい。」と私が申し出たことに始まります。国際セミナーまで来てこんな質問をする生徒も珍しいかもしれませんが、ロジェ氏はさいしょに鍵盤上の指の体操から始まってスケール、アルペジオ、オクターヴの練習などの概要をさらりと解説し、これを毎日やるんだよ、と楽しげに話してくれたものです。私には最初の指の体操のときの音響がとても響き豊かで、背筋がしゃんとするくらいものすごいものに聴こえました。日本に帰って楽譜屋さんで「初心者のためのピアノ・テクニックの基本原理」の最初のページで「あ、これだ。」と指の体操の項をみた時の驚きは忘れられません。

の後ジャン=フィリップ・コラール氏のクラスでは、テクニックの基本と応用の美学とでもいうほどのコラール氏の<ピアノ哲学の洗礼>を浴び、私のテクニック研究が始まったのでした。そこから15年の歳月を経て「Kuroda式ピアノ演奏メソッド」と言ってもいいくらい未就学児たちにもわかりやすく、それがテクニックというまえに、ピアノはそうやって弾くもの、と自然に教えられるようになりました。 

上級生徒たちのレッスンでも、弾きにくそうにしている個所を1回聴いただけでさっと聴きわけ、かい摘んで手や手首をどう使って弾けばよいかを解析し、弾き方の違いで変わる音色の違いを明確に弾きわけ、伝え、何をどう練習すればよいのかを提示することができるようになりました。

おとなの生徒さんたちが忙しいなかでさえ楽しくレッスンを継続し上達を確かなものとしていることや、ちいさな生徒さんたちもニコニコ顔でレッスンに来てくれているゆえんだったら嬉しいですね。  

 

きょう、ある生徒OBのコンサートがありました。桐朋付属高からこの春、桐朋学園音大に進学が決まったところですが、元東フィルコンサートマスターのヴァイオリニスト中島ゆみ子さんとスェーデン放送交響楽団チェリストのエリック・ウィリアムスさんとのピアノトリオの演奏会でした。中島さんは私がプラドのパブロ・カザルス国際アカデミーで勉強した年にアンドレ・マルタン氏の呼吸法のクラスでいっしょだったことがあり、今回の奇遇な巡り合せになんとまぁ素敵なご縁!と驚嘆しました。

この生徒OBが音高に入り教室にあいさつに来た時「僕がさいしょに楽しくピアノを習い始めることができたのはこのピアノ室だったんですね。」と嬉しそうにバッハを弾いてくれたのが印象的でした。


私が「Le Petit Clavier」を初めて教えた生徒こそが、この生徒でした。

感慨深いものがあり、今夜の演奏を嬉しく思いました。


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