レッスン楽器


上部フレーム

井上ピアノ教室


ブログ

発表会を終わって…

投稿日:2017-07-18

お暑いところ会場までお越しくださいました皆さま、ありがとうございました。

 

調律、録音、写真、司会、舞台などコンサートをかげで支えてくださった方々やご父兄の皆さまのお力添えにより、無事に発表会を終了することができましたことを心より感謝しております。

 

舞台の上で力をふりしぼって、精一杯演奏している一人ひとりの姿を拝見しながら、ある出来事を思い出していました。

 

あれは6月の初め頃だったでしょうか。発表会の曲を練習し始めてから2ヶ月、いつもより難しい曲にチャレンジしたために、さらってもさらってもどうしてもうまくいかず、悪戦苦闘している方がいました。

 

「この曲が好き。どうしてもこの曲を弾きたい」と意気込んで始めたので、なんとか弾かせてあげたい。でも、やはり難しすぎたかな。もっと易しい曲に変えた方がいいのでは…と揺れていました。

 

そろそろ暗譜を始める時期になってもなかなか突破口を見つけられず、臨時レッスンもしましたがほとんど効果はなく、自分の指導力のなさに落ち込む毎日でした。

 

いよいよプログラムの締め切りが近づいてきました。次のレッスンでもできなかったら思い切って曲を変更しよう、とあきらめかけたその日の夜でした。布団に入り、休もうとした時に、メールの着信音が鳴りました。ひらがなばかりの文字が、ぎっしりと並んでいました。

 

あつこせんせいこんばんは。

うれしいことがありました。

きょうはじめてぜんぶひけました。

あすもれんしゅうがんばります。おやすみなさい。

 

眠気がいっぺんに吹き飛んでしまいました。うれしくて、すぐさま返信を送りました。

 

この方だけでなく、今日演奏された生徒さん一人ひとりに、

 

「やった、弾けた!」

 

という瞬間があったのではないでしょうか。

 

山登りでも、ごつごつした石や、倒れた樹木などに行く手をはばまれ、なかなか先に進まない時はつらいものですね。でも、あきらめずに暗く、険しい山道を懸命に登っていくと、突然、パッと視界が開けて、眼下に思いもかけぬ広々とした風景が現れることがあります。

 

それは、汗を流して、あきらめずに登り続けた人にしか見ることのできない格別の風景です。

 

失敗したり、悩んだりしながらも、あきらめずにがんばり続けたからこそ、皆さんはその素晴らしい景色を見ることができたのです。

 

 

これからも、ピアノのお稽古が技術を伸ばすだけでなく、ご自身を磨くことにつながり、豊かな時間をもたらしてくれますよう願っています。

 

生徒さんも私も、客席の皆さまから頂戴したあたたかな拍手を胸に刻み、また明日から一歩ずつ努力していきたいと思います。




失敗は成功の母

投稿日:2017-07-03

7月2日の会場でのリハーサルは夜遅くまでお疲れさまでした。

 

初めて発表会に出演される小さなお子さまにとっては、真っ暗な舞台袖から眩しいスポットライトのあたるステージへたった一人で出て行って、舞台の上を歩くだけでも大変なことです。私達大人でも広いなぁと感じる大ホール、小さなお子さまの目には一体どんな風に映ったことでしょうか。

 

発表会を何回か経験している生徒さんも「手が汗でぬるぬるしちゃった」「手足が震えて、心臓が飛び出すかと思った」と口々に話していました。

 

緊張して硬くなってしまったのでしょうか。思わぬところでミスをしてしまい、落ち込んでいる生徒さんもいましたね。まだ発表会まで2週間あるので大丈夫ですよ。

 

失敗は成功の母

 

と言うではありませんか。「リハーサルで、できていなかったところを発見できたのはラッキーだった」くらいに考えましょう。うまくいかなかった原因をきちんと見極め、重点的に練習すれば、きっと次への飛躍につながります。

 

失敗したことで、ミスなく弾ければいいという「守りの演奏」になってしまうのは残念です。

 

一人ひとりが、今、自分にできる最善を尽くし、自分なりの目標に向かってチャレンジしてゆくことができますように。

 

そして、発表会がどなたにとりましても「ピアノを弾いていて良かった」と実感される一日となりますように…





車椅子を押しながら…

投稿日:2017-01-25

鉛色の雲が低く垂れこめ、しんしんと底冷えのする日でした。

 

最近、父は思うように足をあげることができなくなり、辻堂の病院に行く時には車椅子ごと乗れる介護タクシーをお願いするようになりました。通院以外はめったに外出しないので、何枚も何枚も重ね着して出かけます。

 

病院に着くと診察の前にまず、いくつかの検査を受けることになっています。採血、レントゲンとまわり、超音波の待合室に入ると、たくさんの人であふれかえっていました。1時間くらい待ったでしょうか。やっと父の順番がきました。

 

このところ筋力が落ちて、手足がすっかり細くなってしまったため、ボタンを外すのも上着を脱ぐのも、普通の方の何倍も時間がかかります。この後にも大勢の人が待っているのに…と思うと私はつい、着替えるのを急かしてしまいました。その時、背後から声がしたのです。

 

「ゆっくりでいいんですよ」

 

検査をしてくださる技師の方でした。父の顔が一瞬、ほころんだような気がしました。その方は、父のゆっくりとした動作に合わせながら、一緒に着替えを手伝ってくださいました。

 

さらに1時間半ほど待ち、やっと診察が終わりました。

 

車椅子を押して外へ出ると肌を刺すような寒さでしたが、、検査室での言葉を思い出すと、心の中がじんわりとあたたかくなりました。

 

こうやって、誰かの小さなひと言に支えられて、私達は生きているのかもしれません。


下部フレーム