レッスン楽器


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井上ピアノ教室


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発表会の曲選び

投稿日:2014-02-08

朝、窓を開けると一面の銀世界。午後にかけてだんだん雪が強まるという予報なので、レッスンは別の日に振替えることにしました。夕方、駐車場の雪かきをしようと、エスキモーのような恰好をしておそるおそる外へ出てみました。きゅっ、きゅっ。新雪を踏みしめる心地よい音。真っ白な道には、クッキーの型抜きをしたように足跡がついています。調子にのって歩幅を大きくしたとたんに、玄関前ですってんころりん!みなさん、どうぞ気をつけてお過ごしくださいね。

 

 

 

発表会は7月なのでまだ先ですが、レッスンが月2回の大人の生徒さんなどは、そろそろ曲選びを始めています。ご自分で弾きたい曲がある場合は、できるだけ最優先したいと思っています。なかなか決められない方は、生徒さんの個性が発揮できそうなものを教師が何曲か選び、演奏して、自分の心にピタっとくるものを生徒さん自身に決めていただくようにしています。なかなか思うような曲にめぐり合えず、何回か仕切り直しになる場合もしばしばです。でも、どんなに時間がかかっても、自分が心から弾きたいと思う曲に出会うまで、じっくり選んでいただきたいと思います。好きな曲ですと、自然に前向きな気持ちになるからでしょうか。思いもかけない、その方の良い面が引き出されることがあるからです。

 

曲選びといえば、フィギュアスケートも、フリーで使う曲を決めるまでは大変なのですね。オリンピックが始まる少し前、テレビで浅田真央さんの特集番組をやっていました。振り付け師のタラソワさんの部屋を真央ちゃんが訪ね、ソチで使う曲を選ぶシーン。二人の険しい表情から、張り詰めた空気が伝わってきます。タラソワさんの提案する曲を、みけんにしわを寄せながら聴き入る真央ちゃん。アシスタントが次々に違う曲をかけますが、どれもしっくりこないようです。「今までのスケート人生のすべてをかけて滑る。その自分の想いを込められる曲」というのが真央ちゃんの望みだったのです。緊迫したやりとりが続きます。やっと、真央ちゃんの体が音楽に合わせて動き出したのは、ラフマニノフのピアノコンチェルト第2番でした。大地の底から鳴り響いてくるような壮大な調べ。この曲は、ラフマニノフが交響曲第一番を書いた後、酷評され、精神的にバランスを崩し、その苦しみから立ち上がりつつある時に作った曲だそうです。最愛のお母さまとの死別という試練、トリプルアクセルが跳べなくなるというスランプを克服してオリンピックに挑む真央ちゃんは、自分の想いと重なる何かを、この曲から強く感じ取ったのかもしれません。

ひのき舞台で、真央ちゃんのたゆまぬ努力が花開きますように…

 

 

 

 

 

 

上智大学カウンセリング講座

投稿日:2014-01-27

昨年の4月から一年間、金曜の夜に上智大学カウンセリング講座に通いました。「人を助け、励まし、支える」際に、私達はどうしたらいいのか。「人を大切にする」とはどういうことなのか。一方通行の講義ではなく、演習を通して共に考え、学び、深めていく授業でした。錆びついた私の頭にとっては想像以上にしんどいもので、何度もくじけそうになりましたが、先生方の熱意や共に学ぶ仲間の励ましにささえられて、一年間休まず通うことができたことを心より感謝しています。

 

小グループでの対話と観察、ロールプレイングなどを通して互いに学び合う体験は有意義なものでしたが、同時に、自分自身のいたらなさと正面から向き合う時間でもあり、その場から逃げ出したくなることも何度かありました。でも、「失敗のセッションなどないのです」という先生の言葉に勇気をいただいて、なんとか前に進むことができました。

 

特に3泊4日、一日約10時間という夏の集中研修は忘れることのできない思い出です。マイクロ・ラボラトリー・トレーニング(小さな実験室での対話訓練)は、対話グループと観察グループ5人ずつに分かれ、それぞれが役割を持ち、グループ全体でわかり合っていくというものでした。なかなか自分の殻を破れない私達に、先生は全身全霊でぶつかってきてくださいました。「仕事も休み、家庭もおいて、あなた方はここに何しに来たのですか」という言葉を聞いて、はっと目が覚めました。人から教えてもらうことは、これからもできます。本を読んで学ぶこともできます。でも、自分の中で何かがストンと落ちるような体験は、今、この時にしかできないのです。もっと一回一回のセッションに真剣に臨まなくては、と気力が奮い立ちました。対話を重ねるごとに、一人ひとりが心の扉を開いて見えない糸でつながっていくような、温かい気持ちに包まれました。

 

 「球根が春になって芽を出し、花を咲かすためには、自分で殻を破らなくてはなりません。人も真に自由になるためには、自分の殻を自ら破って出ていかなければならないのです。時に、痛みや苦しみを伴うかもしれませんが、コンフォートゾーンから踏み出さない限り、人は成長しないのです」

 

という先生のお言葉が、今も深く胸に焼きついています。カウンセリング講座を受講するまで、おこがましくも私は、人の話を聴くことができていると思っていました。でも、それは、自分の経験に照らし合わせて「わかったつもり」になっていただけだったということに気づきました。自分の価値観、自分の枠組みを脇に置いて、目の前の人をありのままにわかろうとする。これがいかに大切で、難しいことか、痛いほど感じました。相手が本当に伝えたいことは何なのか。私達はつい、表面に出てきた言葉に反応してしまいますが、「言葉にならない声に耳を澄ます」ことが何よりも大事だということを、身をもって学んだ一年間でした。

 

小さい頃から通ってきてくださるピアノの生徒さんやお母さまとは、5年10年といった長いおつきあいになります。年を重ねるごとに、生徒さんだけでなくお母さま方からもピアノ以外のさまざまな悩みを打ち明けられるようになりました。生徒さんやお母さまの心の重荷を少しでも軽くできたらと思ったことも、講座を受講した理由の一つでした。この講座で学んだことを心の拠り所にして、自分のおかれた場所で、悩み、悲しんでいる人のできるだけ近くに寄り添い、その人の苦しみを受け止めることのできるような人間になりたいと思います。

 

 

 

 

 

 

小さな春

投稿日:2014-01-13

年明けのレッスンが始まりました。「一人で飛行機に乗っておばあちゃんの所に行ったよ」「お母さんが私の大好きな黄色いぐるぐる巻き(伊達巻かな?)を作ってくれたの」「富士山から上る初日の出を見に行ったんだ」「初めて雪国に行ってそり遊びをしたよ」皆さん、それぞれお正月の思い出をたくさん抱えてレッスンに来てくれました。「冬休みに作りました!」と自分で作った紙芝居を持ってきてくれたお友達もいます。また、続きを待っていますね。

 

今朝、ふと気がつくと、黒い土から小さな緑の芽が顔を出していました。秋に植えたチューリップの球根。毎日少しずつ水をやってきました。ピアノのおけいこを続けるというのは、土を耕し、球根を植え、花を育てることに、とてもよく似ていると思います。秋に球根を植えてあとは放りっぱなし、というのでは、春にきれいな花を咲かせることはできません。めんどうだから、と気が向いた時だけバケツで水をやったらどうなるでしょうか。そんなことをしたら、球根はいっぺんに腐ってしまいます。毎日休まず、少しずつ水をやり続けることが大切なのですね。

 

生徒さんが、いつの日か自分らしい花を咲かせることができるよう、ささえてゆくことができたらと思います。

 

 

 

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