ピアノ教室コンセール・イグレック♪
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ブログ
エッセイ:春が近づいていますね
投稿日:2010-02-19
朝の寒さが和らいで、春が近づいているのを感じます。
「こんにちは!」
教室に明るい声が響きました。中学受験で昨年からお休みしていた生徒が、無事合格の便りとともにさっそくお母さまとレッスン復帰のあいさつに来てくれました。お母さまとレッスンの方向をお話し、すぐにレッスン再開。「ピアノには触れてみた?でもちょっと指先に違和感ある、そんな感じよね?」コルトーテクニックの第1歩をやってみる。「前は白鍵でやったと思うけど、ちょっと違うところでやってみよう。音は変テコだけど、指にとっては感触がいいかも。ショパンはね、このポジションでやるように生徒に教えたのです、って。」とお喋りしながら誘導してゆく。持ってきた「エリーゼのために」は、曲の展開や音型・リズムの特徴を音を交えて説明しながら、あっという間の楽しいレッスンでした。
次の生徒もひと際明るい顔。ドアフォン越しのビデオの表情からして明るさが際立った。(そういえば昨日だったんだ。・・・)「試験どうだった?」「よかった。・・・1番。最高位!」「すごい!!」音楽科の声楽専攻に通う高校生。副科ピアノをもっと勉強したいと、ここまで通ってくれている。彼女のレッスンでは「これはピアノ科の学生にだってむずかしいことだけど。・・・」とか「音大のピアノ科生でもこういうことは結構知らないかも。」というこようなことばがどんどん出てくる。私は生徒たちの前ではフレキシブルだから、そういう言葉を先生から引き出す要素を彼女のピアノは持っているということになるのだが、秋のバッハインベンションの試験での最高位に続いて今回ハイドンソナタで好成績をおさめたことは、私としてもとても嬉しい。
小学生たちは冬休み〜お正月明けの緊張&緩みからやっと解放されたという感でやれやれといったところですが、この新しいHPを見て入会された方のレッスンも始まりましたし、2月のコンクールで明らかに仕上げ度をアップして上達をみせた生徒など、特に社会人も含めて上級者たちの充実ぶりがうかがえて、このところレッスン時間も軽やかに流れてゆきます。
そういえばこないだ素敵なコンサートに巡りあいました。「ハインツ・ホリガーと仲間たち」と題したオーボエの名手ホリガーとスイス・チェンバー・ソロイスツによる演奏会でした。(2/11:長久手町文化の家森のホール)ホリガーは70歳と聞いてびっくりしましたが、まろやかな周囲をつつみこむような音色は年齢を感じさせず、こうして保持する姿はすばらしかったです。またフェリックス・レングリのフルートはもとよりアンサンブルのメンバーが秀逸で、その音量バランスやデュナーミクなど見事なアンサンブルが聴けました。演奏を聴きながらまるで譜面が見えてくるようにそのアーティキュレーションが明確で、自分の10本の指が踊り出すような感覚でした。会場で「さすがにきょうはお知り合いの顔はないかなぁ。」と思いきや、帰り際名古屋音大のピアノ科の先生とバッタリ。「あら、どのあたりで聴かれていらっしゃいました?」ピアノの入ったプログラムもないし、互いに意外そうな顔?・・・いやいや1月、2月は音大の先生方にとっては学内試験に卒業試験、受験やらコンクールやらで「いろいろなピアノ」と付きあわなきゃならないから、こうしてピアノ抜きのすばらしい演奏で2時間というひとときを持てるのは、一入なのでしょうね。
私も久々に緊密した充実度の高い演奏が聴けて、こうなると私、幸せな気分になって夕食なんてどうでもよくなるんです。美味しいディナーで幸せになるのもいいかもしれないけれど、私は「団子より花」のタイプです。・・・で、毎日レッスン室で素晴らしいピアノに遭遇できたらもう先生はおなかいっぱいの気分でいいダイエットになるかも・・・、と生徒たちに願かけをしたい(笑)と思います。
「門下生コンサート」に向けて、がんばってね!
エッセイ:音楽の未来に向けて
投稿日:2010-01-03
明けましておめでとうございます。
今年は雪の白さに気もちの引きしまる年明けでした。
この3が日はいろいろなことを考えていました。
私は89年に初めてフランスでの夏期セミナーに参加し、翌90年に2夏続けて再度訪れ、その際パスカル・ロジェ氏にフランスメソッドの基本を教わって以来ずっと勉強を続け、その基本原理と応用を理解するに至りました。ほぼ20年をかけて、バロック、古典からロマン派、近代にかけての全作品で、その基本原理をどう応用させて練習すればよいのか、またそれを理解するためにどういった基本的な毎日の練習があるのかを、わかりやすく説明することができるようになりました。そういったテクニックについて私は大学時代に習ったことはほとんどありませんでしたし、周囲も皆そうでした。しかしとりわけ98年に受講したジャン=フィリップ・コラール氏のレッスンで、氏が基本原理の応用を淀みなく滝のような勢いで説明するのを垣間見るにつけ私は何年かかってもそれを理解したいと思ったものです。その頃は正直もっとかかると思っていましたし、20年でここまで来るとは思ってもみませんでした。
一昨年まで演奏活動とレスナーとしての仕事でいつも時間いっぱいでしたが、昨年一年はこれまでのピアノの練習時間と同じくらいをヨガの時間や自分との対峙の時間をもちました。そして生徒たちをじっくりと見つめ、コンクールや試験前などに立ち向かっている曲については相応の勉強をし、それを伝えることに情熱をもって向かいました。そうやって少し自分がアティテュードを変えるだけで、生徒たちから数々の予選通過者や受賞者が出ました。生徒たちの情熱をくみとってサポートし、そうしていっしょに喜べる時間を持つことができたそんな中で自分自身の方向も見えてきた思いです。これからさらに楽譜を掘り下げ読んでゆくことの大切さを知りました。若い頃から手掛けてきたテクニックについては文献も少ないうえ文書だけでは到底分らないことのほうが多く、音を優先しながら自分が演奏発表を通して実践で学んでゆくことが必要不可欠でしたが、その点楽譜の掘り下げについてはいろいろな文献や研究があり、これから自分次第でどれだけでも勉強できる可能性があると思います。楽譜の有効な読み方、それはバイエルなんかの初期から教えていっても決して早いということはありません。でもまだまだ日本では何より指が動くことのほうに目も耳も行きやすく、楽譜がしっかりと読めれば指は動く、という発想がありません。楽譜の掘り下げは日本の音楽教育の中でとても遅れているところだと思います。生徒たちにとっては楽譜をていねいに読む力を持った上でショパンが説いたテクニックの原理に基づく手首の柔軟性などからくる音の響き(=タッチ)の豊かさをあわせ持つことができれば、生徒自らが自分たちの表現を自由に、最大限に惹き出すことができるでしょう。
音楽が好きで誠実に努力できる生徒たちをサポートしてゆきたい。ピアノに初めて触れてわずか半年で人前で弾く幼児の生徒にもテンポの大切さを、それだけで自信にみちた顔に変わります。ピアノを始めて2年めの生徒が音の並行や反行を読みとり表現できた時の嬉しそうな顔。ピアノを習って僅か3年で手首の柔軟性の大切さを見つけ、すばらしいショパンの響きに触れる生徒。それまでお母さんが弾いてくれる音を頼りにしていた生徒が自分で音符を読むことに挑戦し、頑張った時の達成感に満ちた顔。やる気のある生徒にとっては、1年1年がとても大切な時間です。ご両親の理解や環境も大切なこと、コンクール前には不安げなお母さまに励ましの声をかけることや最後まで課題を与える時も。お母さまの期待が大きくて本人が自分の気もちをよくわかっていない時期もあります。(たとえ結果やめることになったとしても)本人のこころからの気もちを引き出すこともレスナーとしての仕事だと思います。またコンサートやコンクールに誠意いっぱいで向かう者もあれば、覇気で向かう者もあるでしょう。生徒自身が音楽に対して真剣であれば、そこは容認する懐の広さも要ります。(これについては高校時代に小林仁氏のレッスンに伺った際、私の前に受講しているひとが何だか難しそうにラヴェルの作品を弾いていて「君、芸大受験は何回め?」と聞かれ「初めてです。」との答えに「初めてならそれもいいだろう。」と仰ってそのレッスンはお終い。私はそのやりとりに目を丸くして聞き入っていたのを思い出します。思えば私の師は厳格で寡黙な先生たちばかりでした。)音大卒の生徒や長らくいろんなレッスンを積んできた人でさらに勉強したいというひとたちも、音大での勉強やこれまでのレッスンがどんなポジションを示すのかを把握すれば、自分のやる気に勇気を持ち、未来の課題も見えてくるのではないかと思います。
音楽は広くて大きい。テクニック指導に加えての楽譜の読み込みについてはいろいろな先生方のご研究をみての通り、きりがない程に奥が深いことでしょう。これから10年、20年といったビジョンで演奏法として取りいれ、練り上げてゆくべきと思っています。そうしてたくさんの生徒の中から、世界に通じる生徒をひとり、育てたい。そう思います。
今年が皆さま方にとりまして、すばらしい一年でありますように。
エッセイ:香しい調べ
投稿日:2009-12-26
ひと月ほど前の11月23日、河口湖円形ホールでコンサートを聴きました。
一帯は紅葉まつりの終盤、この素敵なホールに出かけてみたいということで、友人と時間を作って出かけました。
ハイドン、ベートーヴェン、シューベルトの作品にまじり武満徹、Yuki Morimotoの作品が演奏されたのですが、ウィーンフィル首席のおふたり、ヴァルター・アウター氏(フルート)とユンゲル・フォグ氏(チェロ)に加えて浦田Fog陽子さんのピアノがとりわけ素晴らしく、会場のベーゼンドルファーの音色とともに異空間へ誘う香しい調べを聴かせてくれました。
昨今ではヨーロッパでもクラシック音楽の衰退が囁かれていると聞きますが、このコンサートを聴いてまだまだ歴代のクラシックの伝統を語り継ぐ音楽家というのはいるものだと深く思ったものです。浦田Fog陽子さんのピアノに、音楽に大切な豊かな母性とこどものようなキラキラした純粋さ、凛としたセルフコントーロール力などを感じました。ひとつひとつの音すべてに限りない表現があり、また音に対するセンスが卓越していて、金粉がこぼれてくるような神々しさがあります。それは十数年前に聴いた20世紀の名ピアニストたちの往年の演奏を連想させるような、・・・そういったとても深みのある重みのある伝統へとつながる、最近ではなかなか触れられない感動をおぼえました。
後半に聴いた「没薬」はウィーン在住の作曲家Yuki Morimoto氏の新作。作曲、指揮、声楽、楽器演奏のレッスンにと幅広く活躍されているとのことですが、氏のレッスンを聴講した際、氏が奏でるモーツァルト、シューベルト作品を聴いているとウィーンのその作曲家の時代にタイムスリップしたかのような、或いはあたかもシューベルトやモーツァルトが舞い降りてきて弾いているのではないかと思うほど深淵な時空に触れ、感動したことがあります。ヨーロッパで西欧文化の分野で活躍している日本人の在り難さ。そこには西洋人、東洋人という枠を越えて、この西洋の伝統文化をどうしても次代に継承してゆこうという音楽への愛と信念を感ぜずにはいられませんでした。それもこれもウィーンという懐深い土壌がもたらす術でしょうか。
いずれにしても今年の終盤にこのような素晴らしいコンサートが聴けて、幸せな気もちでした。
浦田Fog陽子さんのピアノに感動し、でも名古屋ではほとんど知られていないのではと思ったので、特筆。
*コンサートの翌朝、湖畔でお目にかかったユンゲル・フォグ、
浦田Fog陽子さん夫妻とぱちり!
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