レッスン楽器


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井上ピアノ教室


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車椅子を押しながら…

投稿日:2017-01-25

鉛色の雲が低く垂れこめ、しんしんと底冷えのする日でした。

 

最近、父は思うように足をあげることができなくなり、辻堂の病院に行く時には車椅子ごと乗れる介護タクシーをお願いするようになりました。通院以外はめったに外出しないので、何枚も何枚も重ね着して出かけます。

 

病院に着くと診察の前にまず、いくつかの検査を受けることになっています。採血、レントゲンとまわり、超音波の待合室に入ると、たくさんの人であふれかえっていました。1時間くらい待ったでしょうか。やっと父の順番がきました。

 

このところ筋力が落ちて、手足がすっかり細くなってしまったため、ボタンを外すのも上着を脱ぐのも、普通の方の何倍も時間がかかります。この後にも大勢の人が待っているのに…と思うと私はつい、着替えるのを急かしてしまいました。その時、背後から声がしたのです。

 

「ゆっくりでいいんですよ」

 

検査をしてくださる技師の方でした。父の顔が一瞬、ほころんだような気がしました。その方は、父のゆっくりとした動作に合わせながら、一緒に着替えを手伝ってくださいました。

 

さらに1時間半ほど待ち、やっと診察が終わりました。

 

車椅子を押して外へ出ると肌を刺すような寒さでしたが、、検査室での言葉を思い出すと、心の中がじんわりとあたたかくなりました。

 

こうやって、誰かの小さなひと言に支えられて、私達は生きているのかもしれません。


新緑の山道で…

投稿日:2016-05-12

さわやかな天気に恵まれた連休、皆さまいかがお過ごしでしたか?

 

鎌倉も有名どころは人の波でしたが、北鎌倉の浄智寺の裏手から長谷の大仏へぬける山道は、いつものように静けさが漂っていました。                                                                            

 

聞こえてくるのは楓の若葉がさわさわと風にゆれる音だけ。足元には、淡い紫色のシャガの花が咲いています。

 

緑のトンネルが続く坂道で、一人の年配のご婦人に出会いました。時おり足を止め、木々の間を吹き抜ける風を味わったり、慈しむように道端の小さな花を見つめたりしながら、ゆっくり、ゆっくり登っていらっしゃるのです。

 

せかせかと先を急ぐハイカーが多い中で、そのご婦人の佇まいになぜか心惹かれました。「お先にどうぞ」と私達に道を譲ってくださるとき、にっこり微笑んでくださった笑顔が今でも忘れられません。

 

高い山の頂をめざしてひたすら登り続ける、というのも山歩きの一つの方法なのでしょう。でも、山歩きの魅力は、もっと限りなくあるような気がするのです。

 

名もなき山でも、このご婦人のようにゆっくりと自分のペースで歩くことによって、思いもかけない発見をしたり…そんなことも山歩きの醍醐味のひとつなのではないでしょうか。

 

音楽の勉強も、演奏技術の向上を追い求めることや、コンクールに上位入賞することだけがすべてではないのです。

 

お一人おひとりが、自分らしい音楽の楽しみ方を見つけ、音楽を「生涯の友」としていくことができますように…

 

そんなふうに皆さんをお支えしていくことができたらといつも考えています。

 

 

 

 

 

 

あけましておめでとうございます

投稿日:2016-01-03

穏やかな天気に恵まれたお正月、みなさまいかがお過ごしでしたか?

 

鎌倉の荏柄天神へぬける小路を歩いていたら、どこからともなく甘い香りが漂ってきました。足を止めてふと見上げると、垣根の向こうでは紅梅がほころび始めているではありませんか。

 

「今日祈願してきた受験生のもとにも、きっと良い春が来ますよ」そんな便りのような気がしました。

 

ピアノが上手になるだけではなく、通ってきてくださる生徒さんやお母さまが幸せな気持ちになれるような教室をめざして、今年も一歩ずつ努力していきたいと思います。

 

みなさまにとって、幸多き一年となりますように…

 

 

 

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