インタビュー
“ピアノ”と“教えること”が大好き。
音楽を通して人間的に成長していく姿をみていきたいんです。
- こちらの教室はどのような思いで開かれたのでしょうか。
-
- 北澤洋子(きたざわひろこ)
- 国立音楽大学卒業
- 国際ピアノデュオ会員
- なるべく多くの人たちに、“ピアノを弾く喜び”、“音楽を楽しむ気持ち”を知ってもらいたいという気持ちが強かったですね。
とにかく“ピアノを弾くこと”と“教えること”がすごく好きなんです。
あの生徒さんにはこの曲を弾いてもらいたいとか、来年あの曲を弾けるようになるにはどうやって進めていくのがいいだろうとか、発表会の曲はどうしようかとか、そういうことを常に考えています。
私自身もピアノに対して、少しでもうまくなろうという気持ちと少しでもたくさんの曲を弾いてみたいという気持ちが強いので、いまでも練習していますよ。やったらやっただけ自分に返ってくるので達成感もありますから、それを生徒にも伝えたいですね。
- もともとは小学校の先生だったそうですね。
- 大学を卒業して、ヤマハの音楽講師になるか小学校の先生になるか迷っていたときに、今の夫のアドバイスもあって、音楽を好きな子どもたちを対象にするだけじゃなくて、音楽が好きな子もいれば嫌いな子もいる小学校で音楽の楽しさを教えたほうがやりがいがあるんじゃないかと思ったんです。
3年間(2、3、4年生)担任を受け持ったんですけど、音楽だけではなくいろんなことを教えないといけないので本当に大変でした。でも、「教えることが楽しい」ということにそのとき初めて気がついたんです。教えることによって少しずつ人間的に成長していく子どもたちの姿を見るのがうれしく、充実感がありました。
- その経験がいまのピアノ指導の仕事にも活かされているのではないでしょうか。
- 生徒ひとりひとりを見て、どうやったら楽しんで授業を受けてくれるか、興味を持ってくれるかを考えることが大切なんだと知りました。小学校で教えているときに培ったことが、いまのピアノ指導の仕事にすごく役に立っていると思います。
いま「こどものクラス」で取り入れている「ピアノのあしあと」も小学校で教えていた経験があるからこそ思いついた発想ですね。発表会のプログラム、自分の感想、私のコメントの入った賞状、もらった手紙なんかを必ず貼って貯めていくんです。とにかく自分のピアノに関わったことを全部ここに貼っておきなさいって。これがどんどん増えていくと励みにもなるし、目標も立てやすくなるんです。自分の音楽史ですね。
課題はできるだけひとつに絞って具体的かつ簡潔に伝えています。
楽しく長く続けられる工夫をすることが大切だから。
- 現在、先生の教室にはどのような生徒さんたちが通われていますか。
- 4歳から70代の方までいろんな方がいます。保育科でピアノを学ぶ大学生や、仕事をしながら趣味で続けている社会人など様々です。20代の女性で、小学生のときからもう20年くらい通っている人もいます。長く続けている人が多いですね。子供では男の子が多いのも特徴かもしれません。
「ストレス発散になる」「気分転換に弾いています」とか「学校の合唱コンクールの伴奏者に選ばれた」とか「言葉が通じない留学先でピアノを弾いたらすごく喜んでもらえた」とか聞くと、本当にうれしいです。
- 先生の教室の特徴や指導方針を教えてください。
- ピアノのレッスンは最初が大切です。基礎力(音感やリズム感、知識など)、テクニック(指や腕の使い方)、表現力(感じて表現する力)の3つのポイントを押さえて、できるだけ具体的にわかりやすく教えています。特に子どもたちはたくさん課題を出しても忘れてしまうので、なるべく短く簡潔に。「リズムを直して」とか「指番号だけを直して」とか「同じテンポで弾けるように」とか、ポイントは短く1曲にひとつか、ふたつ位伝えます。
子どもも大人もそのほうが理解しやすいですし、スムーズに進みます。
基本的なテクニックが身について、だんだん上達してきたら、それぞれの表現力を引き出していきます。ひとりひとりの個性や好みに合わせて教材を変えたり、教え方や接し方を変えたり。曲を選ぶときも、本人の希望を聞きつつ、できるだけ苦手なものを作らないように、バロックから近現代まで幅広く取り入れるように考えています。いろんな音楽に親しむことがとても大事ですから。
- 先生はいつもどのような教え方を心がけていますか。
- 雰囲気作りは大事にしています。生徒のいいところを見つけて褒めたり、気分がのらないときにはピアノ以外の話をして盛り上げたり、コミュニケーションを取りながら本人のやる気を自然に引き出すようにしています。厳しく指導していた時期もあったんですけど、そうすると自分も生徒さんも嫌な気持ちになって、やる気がなくなってしまうと思うんですよ。いまの人たちは大人も子どもも忙しいし、時間がないですよね。だからこそプレッシャーを感じずに気楽に通えるような教室にしていきたいなと思います。
ピアノを弾くことが精神的な支えにもなる。
ピアノと友達になって音楽と一生つき合っていって欲しいです。
- 子どもたちが長く通い続けるにはどんなことが必要だと考えていますか。
- 親、子、先生、3人で協力していくことが大切だと思います。子どもが壁にぶつかったときや嫌になってしまったときでも、すぐに辞めるんじゃなくて、相談しながらなんとか壁を乗り越えようっていつも話しています。
「男のくせにピアノなんかやって」なんてからかわれたりすることもあるらしいですから、フォローしてあげたり。ピアノだけじゃなくいろんな話ができる関係性を作っています。
ピアノには忍耐力や集中力も必要で、思うように弾けるようになるには時間がかかるけれど、弾けるようになったら本当に楽しいし、精神的な支えにもなります。だからできるだけ長く続けていってほしいですね。
- これからピアノを始めようと考えている人たちにメッセージをお願いします。
- とにかく“ピアノ=音楽”を楽しんでもらいたいです。自分がピアノを弾くことによって音が出て音楽が生まれるって面白いですよね。なんにも難しくないんだってことをわかってもらいたいです。
ピアノを弾くことがストレス発散にもなりますし、ピアノが人生をもっと豊かなものにしてくれます。弾けたら絶対に楽しいし、表現力も身について自分に自信がつくと思うんです。ピアノと友達になって、音楽と一生つき合っていってほしいと思います。