インタビュー
迷いなく進んだピアノ教師の道
- 大学卒業の時、迷いなくピアノ教室の先生への道を選んだそうですね。
- そうですね。中学校や高校の音楽教員になる道もあったのですが、私はどうしても自分でピアノ教室を開きたいと思いました。教室ではこんなレッスンをしてみたい、楽しいイベントもいろいろ企画してみたいと、とにかくやりたいことがたくさんあったので。でも実際に始めてみたら大変なことも多かったです。当時は生徒のお母さんよりずっと若くて経験も少なかったので、「先生、もっと厳しく指導してください!」なんてリクエストされると無理にテンションを上げて頑張ったりして(笑)。
- 最近はどのような感じでレッスンをしていらっしゃるのでしょうか。
- あの頃と比べると今はずいぶん優しくなったというか、余裕が出来ましたね。以前は生徒がレッスンに来たからには絶対にピアノを弾かせなくてはいけないという気持ちがあったのですが、最近はどんなことでもいいから最終的にピアノの上達に結びつくことをやれればいいと考えるようになりました。どうしてもピアノの前に座れない子どもには、たとえばカスタネットを使ってリズムの取り方を練習することもありますし、手作りの音符カードをレッスン室に広げて、私が弾いたピアノの音と同じカードを探すというような遊びをすることもあります。数年前にリトミックの指導資格を取得したので、そのノウハウを活用しながらいろいろ試しています。
生徒の個性に合わせたオーダーメイドのレッスン
- “工夫が好き”“企画を立てるのが好き”という先生の個性が、レッスンに発揮されているようですね。
- 小さな子どもの場合、集中力を持続させるのは難しいものですし、とにかく楽しみながらレッスンするのが一番だと思っています。ピアノを演奏する上で必要な要素をいくつにも分解して、まるで遊んでいるように見せながら少しずつ知識や技術を身につけられるように工夫しているのですが、そうやって続けているうちに気づいたら弾けるようになっていたというのが理想ですね。もちろんそうするためにはしっかりしたプログラムが必要です。特に導入期の子どもの場合には、生徒の個性を考えながら、レッスン前に前もって一人ずつのプログラム作りをします。リズムの習得にはこういう活動、音感にはこの活動というように。
- 生徒一人ひとりに合わせたオーダーメイドのレッスンということですね。
- ちょっと工夫することで、練習が苦手な子どもでも、先生のところに行って良かったと思えるようなレッスンが出来たらいいなということはいつも考えています。なかなかクリア出来ない課題を持っている子どものためには、その子に合った教材を作ってあげるようなこともよくやっているんですけど、それによって出来るようになって笑顔を見せてくれた時には、私も本当に嬉しいですね。
年3回のイベントで生徒のモチベーションをキープ
- 生徒が楽しめるようなイベントもいろいろ企画しているそうですね。
- 教室のイベントは、年一度の発表会に加えて、音楽カルタ大会やクリスマス会など年3回行なっています。クリスマス会といってもただみんなで集まって楽しむのではなく、必ず音楽に関するクイズやゲームを用意するようにしています。たとえば「黒と白の鍵盤が逆になっているピアノはあるでしょうか」というようなちょっとした音楽知識を学べるクイズを用意するとか、チーム分けしてリズムリレーをするとか。また、連弾の賞を設けて、お友だちと連弾を練習して披露してもらうとか。イベントを通して生徒同士のつながりが出来て刺激し合えると同時に、新たな気持ちでやる気をもって練習に取り組むようになってくれれば、というのが私の願いですね。
- レッスンの種類も、生徒のニーズに合わせていろいろ設けていらっしゃるとか?
- そうですね。現在は2〜3歳児のリトミックのクラスに始まって、ピアノステップやコンクールを目指す小学生、勉強や部活で忙しい中高生、音大を目指す生徒さん、そして大人になって初めてピアノに触れる方やリハビリ目的のご高齢の方まで、幅広い年齢層の方に向けて多様なレッスンを行なっています。
生徒一人ひとりと丁寧に向き合っていきたい
- これからの夢を教えてください。
- 自宅で教え始めて30年近くになりますが、これからも今の延長線上でずっとやっていけたら、それが一番だと思っています。どの生徒も、これだけたくさんピアノ教室がある中で私のところを選んできてくれた大切な生徒です。ですから一人ひとりを大切にして、丁寧に向き合っていきたいですね。ピアノ教室の先生というのは、学校の先生とは違ってもっと気軽に話せる存在だと思うんです。レッスンの時に様子を見ていて「この子は最近、練習に身が入っていないな」「今日は何だか元気がないな」と感じたりすると、終了後にいろいろな話をすることがあります。そんな時、最近学校で苛められていてどうしていいのかわからないと言って泣き出したり、親にも言えない悩みをそっと打ち明けてくれたりすることがあるんですね。私に話すことでみんなの心が少しでも軽くなってくれたら本当に嬉しいです。そしてその上で、また先生の教室に行きたいと思ってくれたら、それはまさに教師冥利に尽きることだと思っています。
- 小沢 洋子
(オザワ ヨウコ)
- 信州大学音楽科卒業
- 中学校教諭1級・高校2級音楽免許取得
- 全日本ピアノ指導者協会会員
- ヤマハPENの会会員
- リトミック研究センター認定教室取得