ピアノ教室コンセール・イグレック♪
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ワルシャワ音楽紀行
投稿日:2018-10-11
10月に入り、連日の雨模様に挟まれながら、清々しい秋晴れの日がありがたいような季節ですね。
先月初旬から2週間、初めてでしたがワルシャワを訪れました。
「第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクール」が開催されましたが、私は7日の夜に3時間遅れのフライトで会場入り、第1次予選の最後の2人を聴くことができました。
このコンクールでコンテスタントたちは、現代のモダンピアノではなくショパン時代のピアノであるプレイエル(仏)、エラール(仏)、ブロードウッド(英)、グラーフ(墺、複製)から演奏に使用するピアノを選べることになっていて、エラールだけで全曲を弾く場合はステージに1台、いろんな楽器を曲ごとに換えて弾く人の場合は3台、若しくは4台がステージ上に並んだと言います。コンテスタントもあっちへ行ったりこっちへ行ったりしながら弾く訳です!
でもこの4台選択は第1次予選までで、翌日からの参加者30名から15名にしぼられたた第2次予選ではプレイエルとエラールだけになったので、フライトの遅延さえなければもうすこし聴けたのに、と残念!
翌日はショパン音大でシュライバー教授のレッスンがあり、受講の先生方と街を歩いたり、一日のんびりしましたが、次の日から3日連続で2次予選、午前3時間半と夕刻2時間半近くコンクール会場に缶詰めで聴くショパンの演奏の数々はやはりいい経験になりました。
第2次予選初日の夕方の部はたまたま右端のほうの席で、隣に座っていた方と話していたらコンサートチューナーさんで、話の弾みで終演後ステージ上のピアノ3台を弾かせてくださることになりました。私は会話の途中で「ほんとに?」「たくさん人がいるし。」、きょうは疲れて頭ボケボケだし、「How about another day ?」とかいろいろ言ったのですが、次の写真に写っている楽器3台です。左からエラール、プレイエル、ブロードウッド。
日本人コンテスタント川口成彦さんの素晴らしい音の余韻が残るなか、まぁこうなったら弾くしかないか。でも夢の中のよう。エラールの感触は凄まじく、鍵盤が下りるのにすこし時間がかかる感じがするのだが、音が鳴ったとたん音が天上まで昇っているという衝撃の感覚。プレイエルは一番こころに残りました。弾きにくいと聞いていましたが、私には軽やかで弾きやすく、いつまでも弾いていたい感じ。ブロードウッドはとても響きがよく、ワルツ第16番の最後の和音なんかがバランスよく気もちよかった。誰に感謝していいのかわからないくらいの驚愕の経験でしたが、兎にも角にもとっておきの経験をしました。
第2次予選により、15名から6名のファイナリストが選ばれた。
フランスのアントワーヌ・ド・グロレ、ロシアのドミトリー・アヴローギン、ポーランドのトーマシュ・リッター、クシシュトフ・クションチェク、アレクサンドラ・シュウィグートと日本の川口成彦。
ピリオド楽器でショパンが演奏されるとペダルの混色の具合が変わり、あらためてショパン作品の対位法が浮き彫りにされる。私にはそういった演奏が耳に残ったし、全くフォルテピアノ寄りの演奏も珍しさから印象的ではあったものの、ファイナルに進んだコンテスタントたちは皆、モダン楽器で弾いても別段いいだろうな、けどエラール、プレイエルの音色も引き出していて、という柔軟な感触。その中でただ一人残った日本人コンテスタントの川口成彦さんの演奏は、とても思索に満ちた印象的な演奏でした。
「ショパン国際ピリオド楽器コンクール」ファイナルは、大ホールに場所を替えて、コンチェルトの競演、華やかです。
2日間ショパンコンチェルトを6人の演奏で6曲聴けるという幸せ!第1位はトマシュ・リッター、第2位はふたりで、川口成彦(日本)とアレクサンドラ・シフィグット、第3位はマズルカ賞も受賞したクシシュトフ・クションジェクで、川口さん以外は皆ポーランド勢が並びました。
私には川口成彦さんの演奏がとても耳に残り、翌日のガラコンサートでも秀逸でした。コンチェルト第2番を2位のシフィグットが第1楽章、腕を痛めたらしい1位のリッターが第2楽章、そして第3楽章を川口さんが奏し、全く他の二人と違えて大人な印象。
refrainで入る即興的走句というのがピアノフォルテならではと思わせるし、芯のある音で、そう、ピアノフォルテが語っているわけです。そうです!「その弾き方ならモダン楽器でもいいでしょう?!」っていうコンテスタントたちの音は語ってない。細かなニュアンスもテクニックで弾き飛ばし、まぁ歌ってはいるか、でも川口さんの音は明らかにいろいろなイメージを「語って」いて、ショパンが弾いたらこんなだったかな、と思わせる、そんなフレーズ、そんなことを感じさせる瞬間がたくさんあってドキドキした。
このコンクールの紹介ビデオで、ダンタイソン氏が言っていた言葉そのものを思い出した。モダン楽器とピリオド楽器を弾き比べ、(モダン楽器のように)歌うではなく、(ピリオド楽器は)語る!のだ、と。これをまさしく真摯な態度で貫徹していたのは川口成彦さん。そしてポーランドの聴衆たちも感じていたのではないでしょうか。
翌日はタルナフスカ教授のレッスンがあり、私はワルシャワ滞在半分が過ぎた頃からスタインウェイサロンで何度かピアノを借りて練習も始めていた。時間貸しの集中した練習に周囲の耳も相乗効果して僅か数日で実りある練習ができ、よき受講となりました。受講曲は、ショパン作品の中で私のこころに一番響く1曲、「幻想ポロネーズ」。今年は1月に指の怪我、そして父の入退院でほぼ半年のあいだ曲らしい曲の練習をしてこなかった私でしたが、ほぼ2ヶ月のあいだ真剣に出来るだけの準備をしました。ヨーロッパの素晴らしい先生というのは、こちらがアンテナさえ張っていれば先生の放つ電波に吸収されるという感じ。タルナフスカ先生は何を押しつけるということもなく極めてオーソドックスな観点からシンプルに厳格に普遍的な留意点を正すのみ。淡々と話し、そしてご自身も手の不調で手術を控えているという包帯姿で、何度となく惜しみなく弾き示してくださった。
レッスン後ホテルに戻りかけたところで、川口成彦さんとバッタリ!そう、同じホテルにコンテスタントが多いのは聞いてたけど。「あ〜!」「え〜?」向こうから声がけ?していただいた感じで「昨日なんて私のなかでは一番。」と言うと「明日コンサートが入ったのでこれから練習しなきゃ!」って。流石です。とても気さくなピュアなお人柄を感じました。
そして翌日ジェラ・ヴォラゾヴァのショパン生家へ行ったのですが、ここでのコンサート、本日の出演者なんと川口成彦さん。2次予選、ファイナル、ガラコンサート、そしてこのコンサートと4日ほぼ連続で演奏に立ち会えました。一つ一つに芯のある音色、即興性のある考え抜かれた思慮深い演奏、素晴らしいです。使用楽器はプレイエル1838年製。奏者は家のなかで弾くので、演奏する姿は見えない仕組み。私はラッキーにも前のほうのベンチが空いたので座り、奏者紹介で気がつきました。
翌日もポーランド内でコンサートがあったようでしたし、その後もパリ、バルセロナと欧州各地で数々の演奏をこなし、また新たに演奏依頼を受けて精力的に活動を展開ています。アムステルダム在住ですが年内にも日本に戻り、リサイタルなど東京方面が多いですが演奏予定がぎっしりとのようです。
ワルシャワ滞在中ワジェンキ公演コンサートも2回出かけましたし、ポーランド舞踊の夕べ、オペラ劇場でのヴェルディ「ナブッコ」鑑賞も忘れられませんが、私にとっては初めての国際コンクールの視察旅行で、コンクールを取り巻く熱気のなか、いろいろなことを感じ、学び、またこれからも考えを促されるであろう貴重な時間となった気がします。
ヨーロッパの音楽事情も時代の流れに曝されつつあるように思うのですが、今回の旅ではポーランドの古きよき伝統に触れることが出来、こころの佇まいが変わったようです。
帰国後は翌日からレッスン開始。ちょうど2週間のお休みをとりましたが、皆とてもよく練習をしてくれていて、何の問題もなしでした。
私はすっかり自分の音楽をふり返り、音楽上思うところは随分と厳格で、年齢にしてはかなり達観しているほうなのだと思いました。ついてきてくれている生徒たちは努力を惜しまない、勇気と情熱のある子たちだと思います。大人のレッスン生の方々も同じく、素晴らしいと思います。ご縁を大切に、こころ込めてレッスンでさまざまのことを伝授してゆきたいと思っています。
さて12月23日(日)の<X’masピアノコンサート>では、バロックからショパン、ドビュッシーの作品を演奏しようと思っています。日本国内ではまだまだ博物館扱いのピリオド楽器の生の音色をたくさん聴き、ステージで5分間だけだけど弾いてしまったし!、今のピアノの基にある音色をたくさん触れたことで、耳が研ぎ澄まされてきたようです。プログラムがだいぶ決まりましたので、〜イベント欄〜にもご案内入れておきました。http://www.musicliaison.com/concert-y/event_detail/s/620/ぜひメモ帳のスケジュールに入れていただき、お出かけいただけましたら嬉しく存じます。
またワルシャワ訪問についてはFacebook「黒田ゆか」公開ページにもアップしています。写真など映像もたくさん入っていますので、よろしければご覧ください。
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