ピアノ教室コンセール・イグレック♪
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ブログ
〜迎春2018〜 ニースでの思い出の学びの数々
投稿日:2018-01-12
新しい年を迎え、皆さま気もちあらたにお過ごしのことと思います。
12/24の「ピアノ教室門下生コンサート」につづき、大晦日の「東急ジルベスターコンサート」TV中継では大学同期の広上淳一氏の指揮で2018年が開幕、元旦夜は大好きなリッカルド・ムーティ指揮の「ウィーンフィルニューイヤーコンサート」をテレビ鑑賞、8日にはオリヴィエ・ギャルドンのピアノリサイタルに出かけ、思いがけず素晴らしい音楽に出会いました。素敵な音楽と美食三昧で、年末年始のお休みを堪能しました。
この年が、皆さまにとって素晴らしい年になりますよう。
今年もよろしくお願いいたします。
「ピアノ教室コンセール・イグレック門下生コンサート2017」では皆さまのお力をお借りして、素晴らしい発表会となりました。
年中の可愛らしい生徒さんから小、中、、大学生〜社会人と生徒全員が、ほんとうに綺麗な音で心を込めて演奏しました。こうして全ての年代の生徒が真摯に自分の音楽を奏でる姿は、私の誇りです。
お習いごと自体に慣れていない幼少のこどもたちのこころの声に耳を傾け、小学生生徒たちの緊張感や中学高校生たちのプライド、情熱と向きあい、練習時間がなかなか取れない社会人たちにはスケジュールに合わせ、仕上げまでのプロセスを頭に描きつつ、そんな中で全体で何を表現できるか、流れをどれだけ作るかを最優先し、最終的には私自身が楽譜を読み込み、皆のフォローに徹しました。そんな思いがひいては発表会全体がもつ表現力、会全体の進行の流れとも兼ねあって、コンサートとしての効果を発揮したのでしょう。 私と生徒6名とで連弾したフォーレ:ドリー組曲、ショパン:即興曲 第1番、第4番、ポロネーズ第15番、スケルツォ第2番、ブラームス:間奏曲作品117、 バッハ:トッカータホ短調、ラフマニノフ:「鐘」、ソナタ第2番、 スクリャービン:ソナタ第4番、リスト:メフィストワルツといったプログラムが堂々と響きわたり、本当にまるでジョイントコンサートのようでした。生徒演奏発表後の<コンサートタイム>では、東京室内管弦楽団首席ヴァイオリニスト水村浩司氏の甘い調べが会場を魅了しました。
年末はたくさんのことに追われっぱなしでしたが、年明けから自分のピアノにゆったりと向きあえたことも、しあわせでした。
1/8午後に、<オリヴィエ・ギャルドン・ピアノリサイタル>を聴きに宗次ホールへ。「悲愴ソナタ」の冒頭からなんとフレキシブルなペダリング。完璧な脱力が紡ぎだすnon legato音の美しいこと。続くドビュッシーの明晰でしなやかなフレージングの素晴らしいこと。演奏スタイルがジャン=フィリップ・コラールに似ているなと思いながら休憩時にプロフィールを見ると、コラールと同門のピエール・サンカンに師事とあります。私が初めてニースに行ったころ、サンカンは相当晩年でしたっけ。ジャン=フィリップ・コラールのレッスンは、テクニカルアナリーゼの連続で、もう釘づけ!もの凄くカッコよかったです。ギャルドンが黒縁のリーディンググラスをかけて弾き始めると、心なしかサンカンの風貌が浮かびあがります。同門や師匠に似てくるなんて、カッコ良すぎない?!後半の「展覧会の絵」は圧巻。ソフトペダルの細やかさ、たまたま客席から見える左足の動きには脱帽!
この同じ宗次ホールでは、ちょうど1年前に「パスカル・ロジェ・ピアノリサイタル」があり、来ていました。パスカル・ロジェは私がニースの国際アカデミーでなんどもレッスンを受けた師ですが、ロジェのライブを聴くのは、ほぼ10年振り。この日のリサイタルでは、サティの「ジムノペディ第1番」に続き「干からびた胎児」、ラヴェル「ソナチネ」、そして思い出深いプーランクの「ナゼルの夜」というプログラム。後半のドビュッシー「前奏曲集第1巻」では、ロジェ氏の演奏にも深い年輪を感じ、ほんとうに<至極の芸>という言葉が思い浮かびました。これらのプログラムのすべてが、私自身もコンサートで演奏したことのある曲でしたし、ロジェ氏にレッスンも受けた曲ではないかな。・・・私にとって夢のような格別のプログラムでした。深みを増した解釈と表現に、ふたたび感激した思いだったのを思い出しました。
この一年前のロジェ氏の終演後サイン会では、「It's my special memory that I took your lessons at Nice in 1990's.」と声をかけようと思っていたら、顔を見るなり「Wow〜!」って。「Ah,you remember me?」「Yes, at Nice.Which year?」「In 90's. 89 to 98 maybe, 5 or 6 periods.」「You played Sonatine/Ravel.」えぇ〜、そうだっけ。どんな風に弾いてたって言うんだろう、うわぁ?!けどすごい記憶力。・・・うふふ、2期めに「ナゼル」も弾いたんだけど。・・・写真を一緒に撮ってもらうと「A lot of memories at Nice.」と言って、再会をとても喜んでくださいました。若い時期に演奏のベーシックからいろいろな示唆を与えてくださった恩師の素敵な演奏に接し、いろいろと感慨深く、この1年前のコンサートも幸せなひとときでした。
(ロジェ氏と)
「A lot of memories・・・.」それはほんとうにたくさんの思い出で、先日のオリヴィエ・ギャルドンのコンサートを聴いて以来、またいろいろなことが思い出されました。
1989年に初めてヨーロッパでのレッスンをいうものに触れ、石の文化のなかで音響をどう作るかが、最初の壁でした。ピエール・バルビゼ氏とパスカル・ロジェ氏のクラスを取ったのでしたが、バルビゼ氏のクラスオーディションで最初に弾いたフランス人の男の子のショパンエチュードOp.10-4はいまだに忘れることは出来ません。バルビゼの愛弟子で、この年パリのコンセルヴァトワールを受験する10代の子でした。その表現力、響きの豊かさに圧倒されました。日本とヨーロッパでのピアノ教育の差異を感じ、留学したいと申し出ると、マルセイユ音楽院の学長だったバルビゼ氏には「マルセイユに来てもいいよ。」と言っていただきました。
(ニース音楽院にて)
しかしながら師は年明けの1月に急逝し意気消沈していたところ、名古屋市から奨学金を受けるチャンスに恵まれ、翌年もつづけてパスカル・ロジェ氏のクラスとPradesプラドにあるパブロ・カザルスアカデミーでのレッスンを受けることができたのでした。
この当時は1期が2週間ずつの受講で、先生方も今より比較的ゆとりをもってレッスンにあたっていたとように思われます。ロジェ氏にはテクニックのいろはを教えていただきましたし、その他いろいろな曲をたくさんみて頂きましたが、モーツァルトのコンチェルトを持って行った時にはセカンドを弾いてくださったこともかけがえのない思い出です。また、サティ「ピカデリー」で学生コンサートに出演した際には、当時アカデミーの主宰だったアラン・マリオン氏に「君は何を弾くの?」と言われ、「サティです。」と言うと「誰のクラス?」と聞き、「あのロジェったら、サティなんかでコンサートに推薦しおって。」と。「あぁ、フランスに来てまでこんなこと言われるんだぁ、マリオン氏はアカデミックなのねぇ。」などと思っていたら、そのコンサートでは私は最後から2番めの出演で、夏のヨーロッパではコンサートは日没に合せてだいたい9時すぎの開演なので、私は夜11時をまわっての出番でどうかなるかと思いきや、すっごい歓声と拍手につつまれて、演奏は受けに受けました。私はフランスではほんとうに受けがよくて、コンサートに出るたびに見知らぬ人たちから「すごくよかった。」「とても気にいった。」など熱い声をかけにきてくれた姿など今もって熱い記憶として残っています。
2夏めのロジェ氏のレッスンでは、プーランクの「ナゼルの夜」全曲をメインにもっていったのでしたが、この時ちょっと面白い出来事がありました。とてもよく弾き込んでいたので、ロジェ氏のクラスに聴講に出かけてきている往年の名ピアニスト?と思しき老婦人が「あの子をコンサートに推薦すべきじゃない?」とロジェ氏に話していました。でもこうこうだから、と宥め、私自身もまだまだ、と思い過ごすという場面がありました。その当時のロジェ氏の注意は、とにかく「Practice slowly!」というもの、その奥義は自分で獲得せねばなりません。脱力したナチュラルな体勢でいると宇宙に通ずるような感覚があり、ゆっくりと正確なリズムを刻んでいると、拍という波も聞こえてきます。
その夏の不思議な経験は忘れられません。いつものような練習で練習室から汗をふきふき出てくると、あのマダムが練習室の廊下にビーチチェアーを持ちだして座っているではありませんか。「Bonjour ! 」と声を軽くかけると、「あ・ん・な・練習ぶりじゃダメなのよ!」と空に向かって怒鳴るのです。階下ですこし涼み、またサウナのような練習室に入ります。小一時間して部屋を出ると、まだマダムがいるではないですか。そしてこんどは、頷いています。
また2,3日後に2階の練習室で練習していると、外壁をつたっておじさんが窓から現れました。この時はゆっくりのtempoに浸りきって、かなりの集中力で涼やかに練習していたのでしたが、これにはホント卒倒しそうになりました。食堂でいつもよくしてくれているおじさんでしたが、ここへ来て気がヘンになったか?!とびっくりもしたのですが、「いや、昨日よりよくなったよ。」とニコニコ顔なのです。「昨日って?昨日も聴いてたの。・・・」って。ほんと子どもが改心しておとなしくきちんと物事を始め出したのを見届けるように。・・・ニースでの学びの経験は、私の大きな糧です。
国際的ピアニストのジャン=フィリップ・コラール氏がニースでレッスンをしたのは確かふた夏だけで、レッスンを受けることが出来、氏のクラスを聴講できたという時間があったということ自体が、今ではままならぬ稀有なこと。コラール氏のテクニカルアナリーゼ力は絶大なるもの。ロジェ氏にテクニックのいろはを習っていた私は、そのフランス式のテクニックアナリーゼの基本と応用の論理講釈を喰い入るように聴き入ったものです。ジャン=フィリップ・コラール氏にその時教えられ、また盗み見たことのすべてが財産となって私の音楽上の蓄積になっています。コラールのクラスでも、ラヴェルの「クープランの墓」を顕微鏡で細胞図を見るみたいにゆっくり練習している少女がいて、練習室を通りがかった時には何を弾いているのかすぐには分からないくらいにゆっくりでしたが、レッスンで奏でるその音楽は素晴らしく、とても褒められていました。こういった日本流からしたらすぐには理解しがたいレッスンの数々の経験は、パスカル・ロジェ氏のレッスンを15回以上受けたことと共に、今ではちょっと考えられないくらいかけがえのない経験であり、私の音楽の尊い一部になっている、と思います。
(コラール氏と)
そんなこんなを思い出し、ほんもの音楽志向のよき生徒たち、そして皆さま方に、レッスン、演奏を通して私の音楽の蓄積を確かに伝え、さらに自分の音楽を充実させてゆくことのできる素晴らしい一年となりますよう。
皆さま方のご健勝とご多幸をお祈りいたします。
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