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島の思い出

投稿日:2009-09-11

朝夕だいぶ涼しくなり、昼はうろこ雲、夜は月の光が明るく、秋を感じます。 いかがお過ごしですか?

私は夏の後半に小旅行に出かけました。まず幡豆郡一色町の佐久島と、今月初めに志摩に泊まり、神島、坂手島、答志島を巡りました。

佐久島は一色渡船場から30分くらい船に乗ったところ。気楽な行程でちょっと海を渡るところがいい。渡船場で潮風にふかれているだけでも気持ちいい。ちょうどお天気もよく、お昼頃佐久島について宿を確認し、東から西側まで往復散歩した。
地図を片手に「西の港までどのくらいですか?」など島の人に声をかけると「ちょうど野良仕事が終わったところでな。名古屋からかね。まぁここから向こうは 食べるとこにゃぁでうちで食べて行くかね?素麺ならあるで。」とまぁ、こんな感じで、素朴そのもの。素麺とは有難いが、せっかくなら海の幸がぜひとも食べ たいので、と遠慮する。
でもほんとに歩けどあるけど、自販機すらなかったのでちょっとたいへん。とっても暑い。西港近くの弁天サロンというところに立ち寄ったら冷房が利いてい て、麦茶を振舞ってくれて助かった。大葉亭近くにただ1軒だけあるよろずやさんみたいなところでアイスクリームを買い、「お昼寝ハウス」というアートオブ ジェに向かった。そこで潮風に吹かれてアイスクリームを食べ、てくてく戻ってくると、先ほどの素麺おじさんが自宅の庭先で薪の手入れをしている。宿に戻っ て汗を流すと、夕食の時間になった。
折角だからとHPで美味しい料理を振舞ってくれそうな宿を選んだのがこれが大正解で、食べきれないほどの皿の数々。活き作りが黒鯛、石鯛、平貝、みる貝、 あわび、それにタコの丸茹で、シャコ、メバルの煮つけ、揚げ物etc.どれもがいい味つけだったし、何よりきょう獲れたての選りすぐりだけあって、美味し い!黒鯛は翌朝、潮汁になって出てきても美味しかった。黒鯛はなかなか獲れないのだと宿の人が教えてくれたけど、いや、この新鮮な味はここでなきゃ食べれ ないでしょう。ここでもなかなかお目見えしないというご馳走、絶品!
この佐久島、すこし路地に入るとバラックと化した建物や昔の店看板などが残っていたりするけれど、島の人たちはの都会度にそんなにギャップは感じない。
たまに名古屋から息抜きに行くにはいいかもしれない。次の朝はきれいな海を眺めて、帰ってきた。

9月に入ってから出かけた鳥羽の島々はちょっとしたカルチャーショックだった。鳥羽から40分ほどの神島は、三島由紀夫「潮騒」の舞台になった島として知 られている。下船して帰りの船まで1時間半ほど。地元のおばちゃんに「景色のいいところ、絵になるような場所ってない?」と聞くと、郵便局に飾ってある地 元の学校の先生が描いたという水彩画を案内してくれる。それでこの絵はここ、この筋を上がってすぐのところの階段、・・・とか丁寧に話してくださる。教え てもらった道順を行く。ちょっと小高い丘から海や立ち並ぶ家並みを眺める格好。そこから更に丘を上がり、保育所の際を通って山道をあがる。この島に唯一の 保育所がこんな急こう配の階段の上のほうにあるのが何ともすごい。車は入ってこれそうにもないし、みんな歩いてくるんだな。・・・「こんなに歩くのでは ちょっとしたハイキングコース並みだわ。」と汗を拭いていると、下りてくる人が「灯台に行かれるんですか?もう少しですよ。」と励ましの声。蝉の声が大き い。もう少しの割にはかなり、てくてくと海沿いの道を進む。だが風が心地よい。しばらく歩いて、突然目の前に灯台が現れた。あれだ!先ほどの人が「きょう は灯台の中にも入れますよ。検査日だそうで、係の人がいましたから。」と教えてくださっていたので、灯台前の急階段もがんばって上り、さらに灯台の中のス ゴイ急な傾斜の鉄棒みたいな階段もつたって登ってゆく。「うわぁ、すごい眺め〜。」係の人にめずらしそうに「名古屋から神島へわざわざ来たのですか。」と 言われたが、いやそう思うのも当然かもしれない。船の便も少なく、90分ほどの滞在にゆっくりする間もなく船着き場へと歩く。その間ペットボトルのポカリ スエットを飲み切らないようにと気をつけながら。だって自販機は1台もないし、灯台のところにもお店の1軒すらない。船着き場の近くに食堂が1軒あるには あるのだが、今日は休業。あとは宿泊できる宿が1軒あるみたい。だが港に着いて思い出した。さっき到着したとき島のおばちゃんが教えてくれた道にすぐ入っ たところに、万屋さんみないなお店があった。そこに「アイスクリームあります。」の文字があった。この島ではアイスクリームを置く店もそうないのだろう。 まだ船に乗るには5分ある。ば〜っと走って行った。アイスクリームのところへ駆け寄ると3,4種類、10数個あるだけのがらんどう。「これ下さい。」お店 には80歳くらいの老夫婦がちょこんと座っていて「スプーンはそこの箱に入っとるが。袋はいるかね。」って小さなレジ袋を突きだしている。「ありがと。」 何か10数年前のバリ島の奥地にでも行ったかみたいな錯覚。でも通貨単位は同じだし、ここは日本ね。・・・一旦鳥羽に戻り、坂手島へ。坂手島は小さな島 で、さすがに足も疲れているので島じゅう歩く気にはなれず、ほんのちょっと立ち寄っただけで戻り、賢島の宿に向かった。

翌日は志摩マリンランドから大王崎を歩き、鳥羽水族館で久しぶりのラッコを見る。いつのことなのかわからないけど、とてもきれいにリニューアルされたのにびっくり。この日は鳥羽に泊まり、翌日答志島へ渡った。
30分ほど揺られて到着。和具港で下船し、歩く。マップ1枚が頼りで何もわからないから、また島の人に聞いてみる。「答志港のほうへ歩いてゆくけどこの辺 りの見どころはどこかしら?」そうすると「この奥に行くと浜が見えるで。」と言われ、路地で井戸端会議をしているおばあちゃんたちび前を通りすぎ、家並み の奥へとはいってゆく。そうすると、はっと抜けたところに浜があった。静か〜。
すこしいい空気を吸ったところで、さて答志へ向かう。1本道をてくてくテクテク。またもやハイキングコース並み。でもこの島は自販機はあるし、民宿もたく さんある。道の途中「やま七」という宿でトイレを借りた。そこで答志へ行く途中に美多羅志(みたらし)神社に面白い木があることや答志のサンデの底という 迷路のような集落を教えてもらって、またてくてく。島にひとつの小学校のすぐ近くに神社はあって、そこに竜に見える木がある。思いついた人が面白いと思う が、きれいな木だった。そこから「サンデの底」といわれる地帯へ向かう。橋本家だらけの一帯。どうしてこんなにも隣接しているところにこんなたくさんの家 が立ち並んでいるのか不思議。古い家屋に交じって新築の家もあるのだが、どうやって建てるのでしょう?ヘリで運んでくるのかな?とっても狭い路地なのに潮 の風が涼しいくらいに入ってくる。すごい。あとは午後の船までたっぷり時間があるので、地元お薦めのロング食堂に入った。引き戸を開けると6、7席の小さ な食堂。まだお昼にはちょっと時間があるからお客さんもいない。「まだ早いかな?」そう言いながら入ってゆく。品書きを見ると定食ものが多い。何せ昨夜の 宿で食べすぎてあまりお腹がすいていない。「貝類が好きなんだけど何かあるかな?」「サザエの活き作りに壺焼きなら。」「ちなみにいくら位?」と聞くと 「活き作りはまぁちょっと大きくないといけないから400円かな?壺焼きは300円。」・・・それってさっきおばちゃんが浜で買ってきた値段じゃないの? まぁ、ならそれ頼む。その活き作りが絶品!サザエの壺に水菜をつめてその上に置いたお刺身はうっすらとサクラ色をしている。壺のよこに置かれた肝が、ふつ うなら苦味があるのに、甘〜い。あまりに美味しいのでもう一つずつもらって、だんだん食が進んできてさんま寿司までいただいて、店を出た。おばちゃんの味 つけや盛りつけがすごく洗練されている。店恰好からは予測できない。気負いのないおばちゃんの顔、忘れられないな。
店を出た間際に出会わせて、店に入ろうか躊躇しているサラリーマン風のひとに「ここ美味しいですよ!」と声をかけた。船着き場の待合所に行くとそのひとが居合わせた。「美味しかった!ありがとう。」旅の楽しみを語りながら、船が来るまでの時間を過ごした。

しかしながらこの志摩の島めぐりはびっくりした。廃屋もかなり見られるが、地元民とすこしの観光客を相手に衣食住をせっせと固めて、日々の暮らしを過ごしている。ものすごく地道さを感じた。まるで子供時代かそれ以前にでもタイムスリップしたような感覚。
私はそのあとパルケ・エスパーニャでフラメンコショーを見てちょっと頭を切り替えて帰ってきたつもりなのだが、名古屋に戻って我が家の当たり前の暮らしを へぇ〜っと思った。あの島、学校にはもちろんあるでしょうけれど、島の家にグランドピアノがあるお宅ってあるかしら。あの島でピアノを習っている子どもた ちっているのかな?船着き場に貼ってあったポスターによればコロッケや鳥羽一郎なんかのコンサートはあるみたいだけど、オーケストラの音って知っているか な?・・・なんかそんなこと思わずにはいられない。
ここ数年の新築の家ならどこでもそうだと思うけど、水道の蛇口をひねることもなくポンを押し下げれば水が出て、冷暖房完備、二重窓構造の静かできれいな シャンデリアのある部屋にプラズマテレビがなっている。そんなホテル暮らしみたいな生活が当たり前と化している。なのにちょっと場所を移せばこんなにも素 朴な暮らしがあるなんて。

折しも、日本中が衆院選の結果に騒然となっている頃だった。
いろんな顔がある。日本って広いんだね。

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