インタビュー
- 樋渡先生は指導歴がとても長いと伺いました。高校や短大で音楽を教えていたそうですね。
- はい、音楽の専門学校で13年間、幼稚園教諭になるためのコースがある短大で33年間、ピアノや音楽一般を教えていました。大学を卒業した直後は自宅でピアノの個人レッスンをしていたのですが、その後、縁があって学校で教えるようになって。気づいたら30年以上もの間、学校で教師を務めていました。
- そんな先生が、またご自宅でピアノを教えようと思ったのは何故ですか?
- 数年前、短大の仕事を辞めた時に、この年齢になったからこそ出来る指導があるのではないかと考えたんです。短大では、将来小さい子どもに音楽を教えるようになる学生たちを教えていたのですが、そういう経験を踏まえて、今度はもう1度、自分自身が小さい子供を教えてみようという気持ちになりました。
現在、私の教室では生徒をお子さんに絞って教えています。小さい子供を教えるのは大変な面もたくさんありますが、生徒たちはみんな孫の世代。どの子も無条件に可愛く思えて、とにかく音楽の楽しさを伝えたいという気持ちでいっぱいです。
- どれくらいの年齢の生徒が多いのですか?
- 今は4〜6歳のお子さんが多いですね。初めてピアノを習う子供がほとんどです。そういった子供たちには、ピアノのテクニックだけでなくリズム感を養うことも大切ですし、何より教室に来るのが楽しいと思えるようにしてあげたいと思っています。ですからレッスンにはピアノの前で出来る簡単なリトミックを取り入れていますし、ピアノもグランドピアノを使用して音色の素晴らしさを楽しんでもらっています。
- そんな小さいお子さんのレッスンもグランドピアノでするのですか!?
- はい、そうです。レッスン室にはカワイCA40とスタンウェイの2台のグランドピアノがあります。何でも吸収するまっさらな“子どもだからこそ”、本物を使うことが大切だと思っています。
- 小さいお子さんを教える上で、先生が大切にしていることはどんなことですか?
- 私はどんな小さい子供でも、また趣味として弾ける程度でいいとおっしゃる場合でも、ピアノを習うからには“道は一つ”とお話しています。ピアノを長く続けることは簡単ではありませんが、だからこそ子ども達には本物を目指して欲しいのです。ピアノを学ぶことは技術の習得だけではなく、ピアノを通して心の栄養を得ることができるのです。人生は楽しいことばかりではありませんが、目標に向かって努力する力、また転んでも起き上がれる力をつけてあげたいのです。
そのためにはレッスンに来た時だけでなく、自宅での練習が大切になります。ですから私の教室ではお母さんたちにもレッスン室に入っていただいて、レッスンの様子を見ていただいています。お母さんたちには、私が子供たちに教えていることを見ていただいて、自宅でもお子さんを励ましながら、出来るだけ毎日、練習させてくださいとお願いしています。
私が音楽学校や大学で生徒たちによく言っていたのは『習慣力』ということです。毎日、確実に練習を積み重ねていく習慣さえつければ、技術力は必ず身に付きます。そして技術が備わると次のステップが拓けて、自信が持てるんですね。
これは小さい子供でも同じことだと思います。小さな積み重ねが自信につながる。でも3歳、4歳の子供に、ただ「練習しなさい」と言っても無理ですよね。だからこそお母さんが側で励ましてあげることが大切だと思っています。
- 小さい子供の場合、お母さんの存在が大きな鍵を握っているということですね。
- 本当にそうです。お母さんたちにいつもお話しているのは、自分の子供を200パーセント愛してあげてくださいということです。子供の悪いところばかり見て叱るのではなく、良さを認めてほめてあげてくださいとお願いしています。大人だってほめられると嬉しいものですよね? そしてもっと頑張ろうという気持ちになると思うんです。小さい子どもならなおさらそうでしょう。お母さんにほめられたら自信につながるし、ポジティブな気持ちの人間に成長できると思います。
- 先生のこれからの夢は何ですか?
- 今は子供たちに教えるのが本当に楽しいし、いつまでも今のペースで教えていけたらいいなと思っています。自宅でのレッスンのいいところは、学校と違って時間を気にしなくていいところですよね。私はレッスン時間を余裕を持って取っていて、30分経っても“今日はもう少し教えたいな”と思ったら時間の許す限り教えてしまうこともあります。生徒一人ひとりに合わせたペースで、楽しくレッスンが出来る、今の環境を大切にしたいと思っています。
その上で、今後もう少し生徒が増えてきたら、グループで演奏するような機会も設けてみたいとも考えています。そういう経験をするのは子供たちにとってもきっと楽しいと思うし、いつか実現できたらいいですね。
- 樋渡千鶴子
(ヒワタシチズコ)
- 愛知県立芸術大学卒業
- 高校音楽講師を経て、名古屋音楽学校にて13年間、名古屋柳城短期大学にて33年間、ピアノ・音楽一般講義を担当する。
- 大学における研究発表演奏会、ヤマハサロンコンサート、名古屋コンサート協会コンサート等、演奏活動と共に老人ホーム・社会福祉施設において音楽指導による音楽療法を行っています。